青岸渡寺 熊野那智大社 那智勝浦町


西国三十三箇所観音霊場の1番札所に当たります。

青岸渡寺は仁徳天皇の御世、インド(天竺)僧から遥々布教にきた(漂流して流されてきたら海上から見えたのだとか。那智の滝は航海の目印とされていた)裸形上人が那智の大滝に感銘を受け、修行の場としたのです。

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建物が出来るのは推古天皇の頃。

那智の瀧の美しさに惹かれて、奈良から訪れた生仏上人は、観音経を100日誦えていたところ、夢枕に裸形上人が現れたのです。

裸形上人曰く「滝の裏に実は庵があり、そこに観音像を置いてあるので、その像を世に知らしめてもらないだろうか?」という依頼でした。

そうはいわれても那智の滝の瀑布(10m以上ある)を思うと生仏上人も足がすくみます。

決死の覚悟で滝壺に飛び込んだところ、滝の奥にウロがありそこが庵室になっておりました。

そこに石の櫃があり如意輪観音が安置されていたのです。

ちょっとした冒険小説のようですよね。滝の裏の隠し部屋なんてなかなかワクワクする設定です。

生仏上人はその像を持ち帰り、夢のお告げの通り、堂宇を建て、観音を安置し、世に知らしめたのが青岸渡寺の始まりとされます。

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青岸渡寺の名前を覚えたのは学生時代です。

「古文書学」のテキストとして最初に渡されたのが、江戸時代の「西国三十三箇所巡礼」の冊子でした。

きっと、古文書に親しんでもらおうと、逸話も多く旅情も誘うこの本がテキストに選ばれたのでしょう。

江戸時代の文書ですから、文法や言い回しの点では現在とそれほど違いはないし、表現も庶民が読むものですから平易なものです。

ところが1番札所の「青岸渡寺」の段階から学生たちの間では不満続出。

悩みなき衆生の多い学生にとって「西国三十三箇所巡礼」なんて辛気臭いし、興味もない(古文書学の講座は博物館実習を受けたい人だけの必須授業でした)

当然なのですが、そのテキストは流麗な仮名文字(漢字はほとんどない個人の手)で書かれたものでした。

箸袋に書かれた「おてもと」の崩し字すら読めない学生たち(一部)には、対訳本のないこのテキストは苦行極まりない。

まだ木簡に書かれた漢字だけの記録を読むか、「日本書紀」など和漢混合の漢文を読みくだす方がずっと楽だと思ったものです。

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なんてことをつらつら思い出しながら那智の瀧へ。

残念ながら昨年度の豪雨で、那智の瀧もダメージを受け、一部決壊しており、修復のための大きなクレーン車が視界をふさぎます。

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<滝の前にあるのは飛龍神社>

せっかくのご神体がなんてこと。

何事も有為転変を免れることは出来ないということなんでしょうか。

現在は青岸渡寺と並んで熊野那智大社が鎮座していますが、そもそもその地は瀧の遥拝所だったと言われます。

瀧がまずありきで、あくまで瀧を遥拝するための建物であり、山全体が瀧を囲む観音修験霊場として開けたのです。

新宮のあたりが「神邑」(かみむら)と呼ばれるのに、那智山は「仏邑」(ほとけむら)なんですね。

元々那智山は神官や禰宜さんの代わりに、社僧と呼ばれる人がいて神様も仏様も一心同体として「熊野権現」として敬っていたのです。

明治時代「神仏分離令」が出て神様を祀る那智社と仏を安置する青岸渡寺(如意輪堂)の建物は分けられたのですが、訪問する人たちは昔通り、那智大社で柏手をうち、隣に移動して青岸渡寺では仏様に手を合わせます。

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<熊野大社と青岸渡寺を分ける門>

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<熊野那智大社>

並んだ社と寺に違和感を覚える人もいるようですが「神様も仏様の崇敬する」、家に神棚もあり仏間も持つ日本人らしい宗教観が現れた場所じゃないのかなと思います。

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さて観音浄土へ至る道が那智山には2つあります。

1つは青岸渡寺の背後にある妙法山に登ると阿弥陀寺が立っております(今回は未訪問)

ここは熊野へ向かう死者の霊魂が訪ねるとされるお寺で、境内には火生三昧堂というお堂があり、衆生の救済を願い生きながら身を焼き往生を遂げるという、何とも激しい厳しい行です。

2つは熊野灘を舵のない舟で渡航し補陀落山を目指す、補陀落渡海という行でした。

(こちらはその様子を描いた井上靖の小説で有名です)

空と海の彼方に浄土がある、死出の旅立ちを決意するに至るほど強い思いというのはどのようなものだったんでしょう。

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テーマ : 国内、史跡・名勝巡り    ジャンル : 旅行
 2012_10_23


Comments

No title 

滝、特にご神体の滝はすごく良い気が感じられます。
科学的に言うとマイナスイオンなのかな?(笑)
スズまま  URL   2012-10-23 08:07  

No title 

スズまま>

周囲は山中(海抜1000mぐらい?)で、日本一とされる那智の瀧があるのですから、マイナスイオンはいっぱいでしょうね。私のような不信心者ですら、清浄な空気で少々は敬虔な気分に浸れます。
近所は温泉でいっぱい。心身ともリフレシュされること請け合いです。
せれまま  URL   2012-10-23 09:53  

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