夏の夜 宇治拾遺物語より 2

Category: 日記   Tags: 宇治拾遺物語  

さてこの物語、無事現世に戻れてめでたしめでたしではありません。

目覚めると、まず心配そうな妻の顔が見え、敏行は最初「夢を見ていたのだろう」と思いました。

それにしては、閻魔庁での恐怖は生々しく、大王の声も耳に残っている。

しかも、妻は「あなたがこの二日ばかり眠ったままで、生きているようにも思えないので、葬儀の準備を始めるところだったのよ」と言うではありませんか。

敏行は、ではあの世に行き、閻魔庁で裁きを受けたのは本当にあったことなのだと思い、妻にいきさつと、金光明経を書き奉って供養すると発願したことを話しました。

kasihara07298.jpg


そして、さっそく精進潔斎して写経に取り組もうと用紙を取り寄せたところ、奥さんは夫の身を案じて「あなたは今弱られて、筆を持つのも大変でしょう。静養し、疲れをとってからにしたらどうですか」と言います。

敏行さんは「それはその通りだ、おまえにも何かと迷惑をかけた。言う通りにしよう」と奥さんの意見を聞くことに。

そもそも精進潔斎だって病人の体力じゃままなりません。

「今まで勝手きままに出歩いて、ずっと心配させどおしだったから、読み上げられた閻魔帳にはワルイことばかり載っていた。せっかくこの世に戻ってやり直すチャンスをもらったんだから妻を大事にしなくっちゃ」

と殊勝に思い、妻の家でしばらく休むことにしたのです。

gosyo07281.jpg

<京都御所>平安時代の貴族などは、庭に大きな池を設け、涼をとりました。

家で休んでいると、今まであちこち出歩いていた風流貴公子がどこにも出歩かないものですから、それを心配した友人や女たちから、見舞いの品や手紙が盛んに届きます。

気の良いマメ男の敏行さんは、それを無視することができず、お礼状を書いたり、返事を書いたりしているうちにいつしか雑事に紛れ、写経は日一日と繰り延べになってゆきました。

unryuin070710.jpg

にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログへ
にほんブログ村

↑良ければ押してね


 
そして休みも明け、出仕が始まると敏行さんは殿上人として沢山の仕事がありました。

御所の見学に行くと、壁には昔宮中で行われていた行事日程が張り出してあります。その数なんと400以上もある
のだそうですよ。中にはお正月のように1日で16もの行事がある日もあるのだそう。

IMG_5792.jpg
<京都御所、清涼殿にある宮中行事予定表>

gosyo07282.jpg

<宿直などに使われた場所、ここに待機する武士を「滝口の武士」と言い名誉なこととされます>
出家前の西行さんは有能な武士で、そう呼ばれたそうですよ。

平安貴族は優雅な身づくろいで、おっとりしているようでも、大変忙しいのです。その間にも歌合せや、宴会など臨時行事にも出席し、御幸があればお供し、宿直もする。元気になれば他の女君のことも気にかかり、恋文を送ったり、外出、外泊が増え、また妻を嘆かせるようになりました。

IMG_5798.jpg
<京都御所、清涼殿>

毎日が飛ぶように過ぎてゆき、それでも、閻魔宮で裁きを受けたことや、写経し供養する発願のことを、忘れたわけではなかったけれど「まだ死なないだろう、まだ大丈夫だ」と思っているうちに、健康を害してしまいました。

激しく後悔した時には、体も弱り、起き上がることも出来ず、筆を持つこともままなりません。

結局発願を遂げることなく、とうとうそのまま身罷ってしまったのでした。

gosyo0728.jpg

<京都御所>

敏行さんはやはり地獄で相当つらい目にあったのでしょう。

しばらくして同じく歌詠みであり親戚筋にあたる「紀 友則」の枕元に、げっそりとやつれ、生前の面影は消えうせた様で、現れ出ます。

友則さんに、敏行さんは、いきさつと、罪を償うために金光明経を写経して供養すると発願したのに生前に果たせず、死んだ後に地獄でさいなまれていることを、泣く泣く語りました。

「写経しようと思って用意した紙は、まだ妻の家にあるはずだ。三井寺のなにがしという僧に頼み、写経し供養してくれまいか」と言う。敏行さんは罫線も引き、写経しやすいよう仕立ててあったのです。

びっくりした友則さんは朝一番で、その料紙を敏行の妻に聞いて探しあて、三井寺へ急ぎ持参したのです。

三井寺に着くと、夢で見た僧侶が立って迎えてくれました。

その僧の枕辺にも敏行さんは出没し、それが気懸りで、友則さんが着くのを朝から待っていたのだと言います。

IMG_1019.jpg


僧侶と友則は、色男で知られた敏行のたいそう哀れな様に、二人とも言葉もなく、望むようにしてやったのです。

またしばらくすると、敏行が夢に現れて「少しばかり苦役が減って楽になれたよ」とお礼を言ったとのことです。

関連記事
スポンサーサイト
テーマ : ひとりごとのようなもの    ジャンル : 日記
 2012_07_29


Comments

やっぱり面白い! 

このお話、面白いですね。
おもしろいだけでなく、何か色々と考えさせられる話です。

それと、1枚目の風鈴の写真、すごく涼しげで好きです☆

で、8/4日は細野渓流キャンプ場です!
たーちゃんに会いたい!
オブたんママ  URL   2012-07-29 23:07  

 

オブたんママ >

藤原敏行のお話も現在の私たちから見ると「お金を出したんだから往生できる」なんて考える人の考えの方が、どうかと思うし「自分が地獄に落ちて悔しいから、現世の敏行を訴える」というのも馴染めない考えですが、当時は貴族階級そうでもなかったんでしょうね。

キャンプ場、ちょこっとだけ顔を出します。
一応たんたんは修行中の身なので、休みは勉強に行かなければならないので…



せれまま  URL   2012-08-01 12:35  

 管理者にだけ表示を許可する


06  « 2017_07 »  08

SUN MON TUE WED THU FRI SAT
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -

プロフィール

せれまま

Author:せれまま
犬たちと暮らす会社員。
アクティブ、アウトドアな犬種たちと、大好きな奈良・京都の寺院。折り合いをつけながら一病息災を模索中

カウンタ

今、何時?

参加してます

にほんブログ村 犬ブログ ボーダーコリーへ
にほんブログ村 地域生活(街) 関西ブログ 奈良県情報へ

御取り寄せ

検索フォーム

QRコード

QR




.